今回は、多重露光で撮るポートレート(人物撮影)の魅力、撮影の方法やコツなどをご紹介します。

僕は「ペットとの家族撮影」がメインなので、モデルさんを撮ることは少なめ。仕事では9割がフルサイズのデジタル一眼やミラーレス一眼での撮影。
でもね、フィルムカメラってめっちゃいいんですよ。

前回オールドレンズでのポートレートについて書きましたが、フィルムカメラで撮るとさらに魅力的で個性的。

これはトイカメラのLOMO LC-Aで撮影をしているので、ピントはかなり甘いですが、今のカリカリのデジタル描写にはない「独特の雰囲気」を感じて頂けるかなと。
僕のこの描写が好きなので、「フィルムカメラで撮って欲しい!」ってご依頼がもっと増えてもいいんじゃないかと常に思っています。

もっとこの魅力を売り出したい、伝えたくって、大阪を中心に名古屋・東京・横浜でフィルムカメラ教室(ワークショップ)を開催してきました。
2020年は新型コロナの影響もあって、開催は見送っていますが、また開催したいなと思っています。

そんなフィルムカメラでのポートレートの魅力については以下をご覧ください。

その中で今回は、多重露光で撮影したものに厳選してご紹介していきます。

【目次】

◇ そもそも多重露光ってなに?
◇ 多重露光のコツとテクニック
・ 基本は明暗差(黒と白)を入れること
・ 黒を効果的に使った例
・ レンズを隠した多重露光
・ 手持ちの素材を利用した多重露光
◇ 多重露光機能がないカメラでの撮影方法
◇ 最後に〜下地フィルムをストックしておこう
・ メモはした方がいいの?

 

そもそも多重露光ってなに?

 

多重露光とは、一つのコマの中に複数の画像を重ね写し込む撮影のテクニックのことです。ようするに、重ね撮りですね。基本は二重露光、二回重ねるのが多いです。
たとえばフィルムカメラだと、一枚撮影した後は、フィルムを送ってから、次の撮影をします。これをフィルムを送らずにさらに撮影するだけ。

分かりやすようにデジタルで撮った写真で解説していきます。
デジタルカメラやミラーレス一眼にも多重露光機能があります。機種によって方法は違いますが、撮影した二枚のデータを選んで、重ねる方法が多いかなと。

てことでこちらの二枚を選んでみました。、「通天閣」とその近くにあったゲームセンターの「マリオ看板」。

「なにこれ?」と思われるかもしれませんが、この二枚を重ねると以下のようになります。



見事にマリオが閉じ込められちゃいましたね(笑)。
ただ見て頂けるとわかるように、重ねることでそれぞれの写真が明るくなっていますね。通天閣は暗くってシルエットだったし、マリオは周辺の文字やインベーターゲームのキャラも薄くなっています。



フィルムカメラも同様で、適正露出(正しい明るさ)で撮ると写真が明るくなるので、わざと暗めに撮るのもコツの一つです。
そこについては、ふわっと明るくってちょうど良いと感じる方も多いので、好みで調整すればいいのですが、多重露光を活かすことで、このように幻想的な一枚を撮ることが可能です。

多重露光のコツとテクニック

◇ 基本は明暗差(黒と白)を入れること

こちらの写真は逆光で手を撮って(空に手をかざして、太陽を手の平で隠しています)、その後にモデルさん(ジャミーメローのMEMIcreamさん)を撮っています。
* 手の影の部分に、モデルさんの顔が重ねるように撮影しています

分かりやすいように、まずは一枚撮りで考えます。逆光で撮ると腕〜手の部分が暗くシルエットに写りますよね。
そこはあまり露光がされていない部分になります。逆に背景は空だったので、明るくなっています。

そこに二枚目を重ね撮りをすると、露光があまりされていない腕〜手の部分(暗い部分)ほど、二枚目に撮った写真がハッキリと写ります。
逆に背景の空は明るいので、人物の身体も薄らという感じになっています。

「先にどっちを撮ればいいの?」とよく質問されますが、どちらでも大丈夫です。

同じく子供の横顔と花を重ねた一枚。
撮影方法は、部屋の電気を消して、子供には窓際に立ってもらって横顔のシルエットを撮影。その後に花を上から撮っただけ。
簡単だけど不思議な一枚が完成。

このように暗い部分を作るのがコツですが、実は黒でもオッケーなんです。

 

◇ 黒を効果的に使った例

パッと見たら花柄の洋服ですが、これも多重露光。真っ黒な服を着てもらって撮影。そしてお花を撮影しています。
顔の部分には重ならないように、子供の顔には強く光が当たる場所で撮っていますが、多重露光のコツはいかに黒い部分(暗い)を作るかです。
そこに重ねたいものが乗ってくるので、被写体の配置を計算しながら重ねましょう。

フィルムカメラだとその場で確認は出来ないので、条件を少しずつ変えながら撮るのもいいですね。
それならデジタルでやっちゃえばって言われそうですが、その結果が分からないからこそ、超大化けした一枚が撮れることもあります。

これって、写真が楽しいって思う瞬間ですね。
『この場所からこのカメラの設定で撮れば、これが撮れますよ!』って全ての結果が分かる一枚よりも、そんな大化けした一枚が撮れた時の方が喜びも大きいのではないかと、僕は思っています。

フィルムって、現像してプリントやデータになるまで数日かかりますが、それを見る瞬間のワクワクさはフィルムカメラでしか味わえません。
さらに、その中に大化けした奇跡の一枚があったら、嬉しくって小躍りすること間違いなしです(笑)。
いや、でもホント。

もちろん、すべてが博打ではなく、コツを掴んで練習すればある程度コントロールした多重露光も出来ますよ。

 

◇ レンズを隠した多重露光

こちらはトイカメラのスプロケットロケットで撮影したものですが、子供が二人いますね。
でも双子ではありません。

これも多重露光で、一枚目はレンズの左半分を隠して撮影。二枚目は右半分を隠して撮影しています。
言葉で書くとややこしいですが、左のレンズを隠している時は子供が右に、右のレンズを隠している時は子供は左に移動しています。

三脚でカメラを固定しているので、継ぎ目もなく綺麗に撮影出来ているかと思います。

こちらはレンズを斜めに隠しています。画像同士が重なる多重露光とは少し違いますが、面白くて不思議な一枚になりますよ。

続いては「子供の横顔とフェラーリの後輪」ですが、戦隊ヒーローみたいになりました。これも子供の後頭部が写らないようにレンズを隠して撮影、その後にフェラーリを撮影しています。
工夫次第で、いろんな非現実的な世界を作れますね。

観覧車ストローですね。口もとんがっていて絶妙です。これは偶然撮れた一枚ですが、データを見た瞬間「うおー!!」と叫んじゃいました。
いろいろ計算して撮影はしているのですが、こんなミラクルが起こるのも多重露光の魅力であり、楽しさです。

◇ 手持ちの素材を利用した多重露光

モデル・女優の鈴木ちなみなんですね。死ぬほどスタイルが良くって可愛かったです。ファインダー越しじゃ勿体無いと思いました。お笑いの「レインボー」のネタでありますよね、好きな人をファインダーを覗くけど、生で見たいんやーってやつ。知らない?

その時の写真はいろんな権利があって全部は使用出来ないので、許可を頂いた数枚だけになりますが、どれもお気に入り。

さて。多重露光は片方をシンプルにしないとごちゃごちゃしちゃいます。そこで思いついたのが折り紙。お子さんがいる家庭ならありますよね。
そうやって、身の回りにあるものと重ねるのもいいですよ。お手軽なのに幻想的になります。

撮影方法ですが、赤〜青のグラデーションになるように折り紙を等間隔に並べて、それを真上から撮影。そこにちなみさんを重ねています。

上記の二枚は、黒い板に蝶々のシールを貼って撮影。そこにちなみさんを重ねています。板は1mくらいの長さのものなので、身の回りにはないかもしれませんが、壁や布などでもいいですね。

蝶々を見ているような一枚と、身体のラインにそったような一枚ですが、蝶々のシールの位置は計算して撮影しています。

この写真は、自分が『よく撮る被写体』を一枚に重ね合わせたもの。
観覧車はトイカメラで撮影する時のモチーフとして、猫は写真をはじめた時からずっと好きな被写体で、娘が生まれてからは娘ばかりを撮るようになりました(笑)。
かつて開催していたトイカメラ教室のグループ展の際に撮影したものですが、娘の頭の中に猫と観覧車を存在させる為に、顔の右側が写らないようにレンズで隠し、接写の出来ないトイカメラだったので接写フィルターを使って、動く娘の目にピントを合わせて、猫と観覧車が写しこめる場所をさがして、、、
と、かなり苦労したのを覚えています。

 

多重露光機能がないカメラでの撮影方法

冒頭でも書きましたが、フィルムカメラでの多重露光は、撮影した後にフィルムを送らずに撮ればいいのですが、多くのフィルムカメラにはシャッターロックがかかります。撮影後はフィルムを巻き送らないと、シャッターが切れません。
だからそういったカメラだと多重露光が出来ません。
*コンパクトフィルムカメラだと「LOMO LC-A+」、一眼だと「Contax G1」などはロックを解除することが可能

そこで、どんなカメラでも可能な撮影方法をご紹介します。

それは36枚撮り切って、巻き戻して、再度撮り重ねていく方法です。


1、まずはフィルムを装填、空シャッターを切って、“フィルムを巻き送って止まったところ”に印をつけます。ここがスタート位置となります。裏蓋を閉めて撮影していきます。印は自分さえ分かれば×印でなくても大丈夫です。

2、普通に36枚撮って、フィルムを巻き戻します。

3、巻き取る際ですが、可能であればフィルムの先(ベロ)が出た状態がいいですが、フィルムを全て巻き取ってしまった際は、フィルムピッカーで先端を出します。

4、再びフィルムを装填、1でチェックした印に合わせます。この際、1と同様で“フィルムを巻き送って止まったところ”と“印”を合わせる必要があります。そこが少し難しいです。

合わせるのに失敗したら、何度かフィルムを装填し直すか、フィルムを巻き戻して無理やり合わせましょう。
自動巻きのカメラだとフィルムを入れるだけで、ぴったり重なることもあります。これなら印を付ける必要もありません。

フィルムピッカーはヨドバシカメラなどで1,000〜1,500円ほどで販売されています。多重露光するに限らず、フィルムカメラをやっていこうという方は持っていても損はないアイテムですね。

最後に〜下地フィルムをストックしておこう

印を入れての多重露光は少し手間がかかりますが、ここに掲載した写真は全てその方法で撮影しています。
理由としては、僕が多重露光する時はその場で何かを重ね撮りするのではなく、基本的には「下地づくり」をするからです。

下地になるものを(花など)36枚撮って、そのフィルムを別の場所で使用しています。



こちらはカモメだけをひたすら36枚撮ったフィルムを遊園地に持って行って使いました。
これの利点はその場にないものを重ねることが出来ます。遊園地にいい感じにカモメなんて飛んでくれていませんよね。

花と重ねたいと思っていても、冬だとあまり花が咲いていません。だから、そんな下地フィルムをストックしておきます。

この方法だと季節をこえた多重露光も可能ですね。
もたとえば桜だけを撮ったフィルムを、紅葉シーズンに使ってみるのも面白いかもしれません。

また、下地として作っておくと、計算しやすい利点もありますし、ごちゃごちゃもしません。
多重露光は片方がシンプルな方がいいので、花だけ、空だけ、折り紙だけ、など。シンプルである程、幻想的な一枚を撮りやすいんですね。

◇ メモはした方がいいのか?

「下地づくりをする時にメモはするんですか?」と質問されることが多いのですが、僕はざっくりメモします。
1〜7枚目までは右側に〇〇、8〜16枚目は左に〇〇という感じで。

そして撮り重ねる時に、7枚目までは右に〇〇を撮ったので、左側に撮ろうと。

たとえばこれだと、右に花を撮っていたので、左にペンギンを撮りました。
これがどちらも右に撮ってしまうと、右がごちゃごちゃ、左が空白になりますよね。

こちらは中心にカモメを撮っていたので、左側に虹を寄せて撮影しました。
多重露光とは思えないシンプルな一枚ですよね。

ざっくりとしたメモがあれば成功率は上がるし、計算がしやすいですね。

はじめは思い通りに撮れないことが多いですが、ミラクルだっていつ起きるかわかりません。
それも楽しみつつ、今回ご紹介したコツを試してみて下さいね◎

 

*多重露光ポートレート撮影のご依頼はお問い合わせください。
*また、習ってみたい方は、個人レッスンでの受講も可能です。